どこかのだれかの未来のために
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しかし、彼女の存在は、すぐに皆の口の端に上らなくなる。
それは思い出すのが辛かった、それだけではなかった。
転戦に次ぐ転戦で、皆疲弊しきっていた。
悲しみに暮れる暇など、僕達には与えられなかった。
ただ、少しずつ彼女の存在が僕の心の中で小さくなっていくのを、ぼんやりと感じていた。
そんな時だった──
「私、士魂号に乗るよ」
滑らかに零れ出た言葉に、僕は一瞬耳を疑った。
プレハブ校舎の屋上で、僕の横に腰を下ろしていたいすみが、唐突にそう告げた。
曇りない瞳は真っ直ぐに空を見上げていた。
「……いすみ、今、なんて……?」
聞きそびれた訳じゃない。
はっきりと僕の耳はいすみの唇が紡いだ音を聞き取っていた。
聞こえなかった振りをしたのは、信じたくなかったから。
嘘だよ、と笑って欲しかったから。
でも、彼女は残酷に、同じ言葉を繰り返す。
「士魂号、私が乗るよ」
迷いない言の葉。
いすみはもう、決めてしまったのだ。
僕に何の相談もなく。
