何色にも染まらぬ君へ
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彼女に腕を引かれて暫く歩いているうちに否が応でも気付く。
自分達の歩いている方向が、伊都が目指しているであろう鍛錬場ではないということに。
「伊都、何処へ行くんだ?こちらは──」
「いいんです。今日は槍の鍛錬でなく、乗馬を教えていただきたいと思いまして」
「?君は確か──」
乗馬は得意だっただろう。
そう言おうとすれば、伊都はにやり、と唇の端を釣り上げる。
悪戯好きな子供のような表情に、趙雲は思わず見入ってしまう。
そうなのだ。
彼女は大人びた表情だけでなく、こんな風に時折あどけなく無邪気な表情を垣間見せるのだ。
だからこそ、手放せなくなる。
放っておけなくなる。
「たまには景色の異なる場所で修行も悪くないかと思いまして。私にとっても、趙雲殿にとっても」
そう言った伊都の表情はとても満足げで。
何よりもきらきらと輝いていて。
思わず趙雲は苦笑いを浮かべた。
ああ、この少女には敵わないな、と。
絡める腕の力を少し強める少女に願う。
どうか変わらずに、ここに在り続けて欲しいと。
叶うなら、その無邪気さを失わないでいて欲しい。
「そう、だな……」
そう呟いて、趙雲は伊都に並んで歩き出す。
いつまでも君の隣を歩こう
ずっと、ずっと
気高く美しい君に
相応しい者であり続けよう
君が君らしく生きられるように──
《終》