何色にも染まらぬ君へ
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「何だよ?今伊都と電話してたんだけど」
『知ってるよ、そんなことくらいは……あのな、お前ももう子供じゃないんだから、伊都に無理言うな』
「母さんに話したら伊都の分の飛行機代は出してくれるって言ってるし、家までは兄貴が連れてくれば迷う心配もないだろ?」
俺は反論する暇を与えないために、捲し立てるように言った。
完璧な計画に兄ちゃんもぐうの音が出ないようで、黙りこんでしまった。
伊達に計画を練った訳じゃないんだ。
侮ってもらっては困る。
「どうせ兄貴も一回家に帰って来るんだろ?ついでじゃないか」
俺はダメだしの一撃を兄ちゃんに食らわせた。
これで伊都がオーケイをすれば、兄ちゃんは伊都を家まで連れてきてくれるはずだ。
『それはそうだけどな……とにかく、伊都にも都合ってものがあるんだ。あまり無理強いするなよ』
「分かってるって。とにかく伊都に代わってよ」
『はいはい──ほら、伊都。いくら森が我儘言っても都合がつかなかったら断っていいんだからな』
『うん、ありがとう。じゃあまた後で』
兄ちゃんが歩いて行く靴音が遠くなるのが聞こえる。
『もしもーし』
間の抜けた声に俺はまた笑いそうになったけど、これ以上伊都の機嫌を損ねる訳にもいかず、何とか抑えこんだ。
どうやら伊都には悟られなかったようで、いつもと変わらない中性的な声で続けた。
『どうしてそんな急に呼んだりするわけ?別に春休みでも夏休みでもいいんじゃないの?』
「だって伊都、ずっと北海道の俺の家に来てみたいって言ってただろ。この辺りの景色は冬が一番綺麗だから」
『……そっか。森もいろいろ考えてくれてたんだ』
しみじみと言われて、何だか急に恥ずかしくなってきた。
俺は照れ隠しの為に母さんのことを口にした。
伊都にはバレバレかも知れなかったけど。
『母さんが伊都に早く会いたいって言ってうるさいんだよ』
そう言うと、伊都が受話器の向こうで声を顰めてくすくす笑うのが聞こえてきた。
やっぱり伊都に誤魔化しは通じなかったらしい。