何色にも染まらぬ君へ
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こんなにも人を好きになったのは初めてだった。
今までそんな気持ちは煩わしいものだと思っていたんだけどな。
あんたに、伊都に出会ってそんなくだらない考えは一瞬で吹き飛んだ。
例えあんたが男でも、この想いは決して変わらないんだ。
《夢から醒めて》
『は?冬休みに北海道に来い?』
電話越しに伊都は驚いたようですっとんきょうな声をあげた。
……何もそこまで驚く事ないだろ。
前々から一度北海道に遊びに来いよって言ってたんだから。
きっと電話の前であの団栗みたいにやたらと大きくて丸い瞳を見開いているんだろう。
寮の電話にかけている訳だから、今の海莉の大きな声に驚いて振り返った人もいるだろう。
そう思うと無性に笑いが込み上げてきた。
その声は受話器の向こうまで聞こえてしまったらしく、伊都は不機嫌そうに言った。
『何がおかしいんだよ』
「いや、あんたの驚きようがあまりに面白かったから」
『……それ、人に物頼む態度じゃない』
ワントーン下がった調子の声に俺はさすがに少し焦る。
伊都を怒らせるとろくなことにならないというのは、前に会った時に経験済みだ。
『ん?伊都じゃないか。誰と電話してるんだ?』
受話器の向こうから兄ちゃんの声が聞こえてくる。
伊都の声を聞くのも久し振りだけど、兄ちゃんの声を聞くのはもっと久しぶりだった。
『森と話してるんだけど、冬休みに北海道まで来いって言うんだよ』
『は?あいつ無茶苦茶だな』
向こうで好き勝手に話してる声が聞こえてきて俺は苛々した。
我が兄貴とはいえ、伊都と親しげに話しているのを聞くと今側にいない自分がもどかしくて仕方なかった。
『おい、森。聞こえてるか?』
受話器から次に聞こえてきたのは伊都の声ではなくて兄ちゃんのものだった。