何色にも染まらぬ君へ
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誰もいない廊下を私は一人で歩く。
私の足音だけがやけに大きく響き渡る。
試合前は本当に静かだ。
皆集中して、自分のポテンシャルを高めているから。
私は何処へ行こうとしているのだろう。
私は何をしようとしているのだろう。
駿と健吾くんの所へ行く?
行って、二人に答えを与えてもらう?
ううん、それは違う。
私は私の意志で決めなければいけないのだから、二人の所へ行く時は、何もかもが決まったあとだ。
「伊都ちゃん!!」
誰かが私を呼ぶ声がして私はすぐに振り返る。
そこにはアイシールド21のユニフォームに身を包んだ瀬那くんが立っていた。
私の姿を見つけて追いかけてきたのか、息が少しあがっている。
瀬那くんってすごいんだ。
私と身長はさほど変わらないのに、『音速の脚』を持ってる。
試合を重ねる毎に瀬那くんは怖ろしいほどのスピードで成長しているんだ。
それは私も、あの妖一兄さんも目を見はるくらいに。
でも、いつの頃からかそんな瀬那くんがとても遠い存在になってしまったような気がする。
あんなにも近くにいたはずなのに、グラウンドで自分よりも強い相手に怯まずに立ち向かっていく瀬那くんを見ていたら、私がとてもちっぽけな存在のような気がしてくる。
一度、瀬那くんにそれを話したら、そんなことないって笑ってくれたけど。
やっぱり私はどうしてもそんな風には思えないんだ。
「どうしたの、瀬那くん?」
私が尋ねるなり、瀬那くんは私の身体をぎゅっと抱きしめてきた。
震えているのが分かる。
それと同時に、心臓がいつもよりもずっと早くなっているのも分かる。
私は動揺を隠すことかできそうになかった。
だって本当に突然だったから。
でも、嫌じゃなかったんだよ?