何色にも染まらぬ君へ
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そこまできてから栗田さんも私が悩んでいることの理由を察してくれた。
ちゃんと栗田さんにも話してあったから。
覚えていてくれたんだ。
「そっか……伊都ちゃんは筧くんと水町くんと仲がいいんだったね」
私はまた小さく頷く。
話すことが出できないわけではなかったけれど、どうしても口を開くのは重かった。
それを分かっているのか、妖一兄さんも何も言わなかった。
その無言の優しさが今は少し胸に痛かった。
迷わずに二人を応援して上げられない事が悔しかった。
私は本当にずるい。
「まあ、お前の応援があるからっていって泥門が巨深に、負けるわけじゃねえ。お前の好きにしろ。中途半端なままベンチに座られることの方が迷惑だ」
「ちょっと蛭魔……何もそんな突き放すような言い方しなくても……」
栗田さんの言葉も聞かずに、妖一兄さんはその場を後にした。
私と栗田さんが残されたけれど、空気はあまりよくなかった。
すごく居心地が悪い。
「ごめんね、伊都ちゃん。蛭魔、あんな言い方しかできなくて」
「ううん。妖一兄さんは誰よりも私のこと、分かってくれてるから。私に、考える時間を与えてくれた」
そう言って私は立ち上がる。
このままここにいても埒があかない
前に進むためには、まず自分が動き出さなくちゃいけないんだ。
「伊都ちゃん!?何処に行くの?もうすぐ試合、始まっちゃうよ~」
「最後の決断に。妖一兄さんが与えてくれた時間を無駄にはできない」
「……泥門のベンチに戻ってきてくれるよね?」
頼りなさげな栗田さんの声に、私もまた曖昧に笑うことしかできなかった。
だって私の心はまだ揺らいでいたから。
私は栗田さん一人を残して外に出る。
自分の『答え』を見つけるために。