何色にも染まらぬ君へ
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大好きな人達はここにいて
だけどここにいなくて
あの人達を応援したいのに
私はそれを許されない立場にいる
私の心は未だに迷っている
決断の時は
もうそこまで迫っていた──
《嵐の前の静けさ》
手には泥門デビルバッツのスコアブックとメガホン。
だけど私の心は今ここにはない。
考えなくちゃいけないことが多過ぎて。
控え室に大人しく座ってはいたけれど、どうしても落ち着かなかった。
巨深ポセイドンと泥門デビルバッツの試合まで、もうあと三十分もない。
私は巨深を応援したい。
ううん、正確には駿と健吾くんを応援したい。
私にとって二人は本当に掛け替えのない人達で。
二人がどれだけ必死に練習を積み重ねてきたのかを知っているから。
でも私は今泥門のマネージャーで。
彼らを応援したいっていうのも本当で。
だってあの地獄のような日々は、つい昨日のように思い出せるから。
私がベンチに腰を下ろしていると、大きな影が降りてきた。
それも、二つ。
影のシルエットでそれが誰なのかすぐに分かる。
あまりにも特徴的だから。
人物の正体は妖一兄さんと栗田さん。
二人は私の兄貴分のような存在。
私が今泥門にいるのもアメフト部のマネージャーをしているのも二人の薦めだから。
ムサシさんが帰ってきてくれたら、また最初の四人に戻れるんだけど。
今はまだ叶わない。
「伊都ちゃん、大丈夫?顔色が悪いけど…何か心配事でもあるの?」
「あー、はい。少し悩んでます」
「ケッ、大方あの糞ツリ目達の事だろ」
的確な所をついてくる妖一兄さんの言葉に隠し事ができるはずもなく、私は小さく頷いた。
だって隠していたって仕方がない。
私は嘘をつくのが下手だからきっとすぐにばれてしまう。
本当は自分がどういう選択をするべきなのかちゃんと分かっている。
でもまだ躊躇って踏み出せずにいる。
私はきっと誰かの後押しを必要としているんだ──