どこかのだれかの未来のために
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揺るぎない瞳で見上げてくるいすみに、厚志も仮面を脱ぎ捨てる。
絢爛舞踏──
人ならざるものの瞳でいすみを見つめた。
鋭い眼差しにも怯むことなく、いすみは厚志を見据えている。
「君なんかに僕の願いが叶えられるの?」
嘲るような口調で厚志は言った。
何度も味わってきた苦痛を、この突然現れた「いすみ」と名乗る少女が消し去れるはずもない。
それなら、今までの自分の痛みが、悲しみが、全て無駄になるような気がする。
「ループを生み出したのは私の“願い”。それならばループを終わらせるのもまた、私の“願い”」
“ループ”という言葉に厚志は身を強張らせる。
繰り返す、という恐怖を、厚志は誰よりも知っているからだ。
思わず、いすみから視線を外す。
あれだけのループを乗り越えてきたのに、いすみには、彼女の持つ“何か”には敵わないような気がする。
彼女は「全て」を知っている。
そんな気さえしてしまう。
厚志は恐る恐る聞いてみる。
「……君は何を、どこまで知っているの?」
そういすみに尋ねる瞳は「速水厚志」のものではなく、厚志自身も知らぬ間に、「青の速水」のものになっていた。
それを知ってか知らずか、いすみの眼差しも一介の少女の瞳ではなくなっていた。
言い放つ彼女の声はとても冷静で。
とても嘘を言っているとは思えなかった。
全身で、彼女はそれが真実だと告げていた。
「“全て”を」
一瞬、いすみの瞳が真紅の色に煌めいたような気がした。
青の対なる真紅──
残酷な程の“赤”だった。