どこかのだれかの未来のために
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ふと上げた視線の先に、厚志は「あるはずのない」ものを見つけた。
ぴんと背筋を伸ばし、それでいて儚げに佇む少女。
早咲きの桜が風に散る中をひっそりと存在している。
空を見上げる少女の瞳には眩しい程の青が映り込んでいる。
厚志は開かれていた手をぎゅっと握り締めた。
今目の前にいる少女は今までのループの中には“存在しなかった”。
だが少女は5121小隊の制服に身を包み、確かにここにいる。
その事実を否定することはできない。
それでも、少女が何者であるのかを確かめる必要があった。
彼女が舞を救う新たな“可能性”となるのならば、どんな手段を使っても利用しなければならなかったから。
偽りの笑顔を顔に張り付け、厚志は少女に近付いた。
いつの間にか使わなくなった“嘘”で塗り固められた自分をもう一度、記憶の淵から呼び覚ます。
自分の願いを叶える為なら「鬼」にだってなろう。
それほどに厚志の意思は揺るぎないものだった。
空を見上げていた少女も厚志の接近に気がつくと視線を戻した。
その瞳は柔らかく細められている。
「こんにちは。5121に配属された人……だよね」
同じ歳くらいだと判断した厚志は、砕けた口調で少女に話しかけた。
少女は屈託のない微笑みを厚志に向ける。
嘘の笑顔で表面上を取り繕っていた厚志は心が痛むのを感じた。
「うん。今日付で5121に配属されたの」
「偶然だね、僕もなんだ。……あっ、ごめん。僕は速水厚志」
言いながら手を差し出すと、少女もそっと小さな手を厚志のものに重ねた。
──そういえば……舞の手も小さかったな
そんなことを考えながら、厚志は少女の白く小さな手を握った。
「私はいすみ。四葉いすみ」
柔らかく微笑まれて、厚志も知らず知らずの内に笑みを返していた。
それを見たいすみはより一層の、剥き出しの笑顔を向けた。
不思議な少女だった。
何もかもを見透かしたような瞳を厚志に向けていた。
「やっと、笑ってくれたね。安心して、私は君の味方だよ。……私は君の願いを叶える為にここに来た」