あなたの奏でる音色
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部屋の中央にはグランドピアノ。
その横には譜面を訂正するための机がある。
そしてその机に突っ伏すようにして、俺の探していた人物は眠っていた。
「こんなところにいたんだ……」
俺が声を上げても、茉麻ちゃんは全く気づいた様子がない。
それどころか体は規則正しく上下している。
どうしてか無性にその細い肩を抱きしめてしまいたかった。
自分だけのものしてしまいたかった。
自分が一番彼女に近いと思っていたのは勘違いで。
自分が彼女のことなら何でも知っていると思っていたのもただの思い込みで。
こんなにも近くにいるはずなのに、今は。
あの真実を知った今は。
君を、とても遠くに感じる。
「茉麻ちゃん。どうして俺には話してくれなかったの……?」
俺は眠ったままの茉麻ちゃんに話しかけた。
聞こえていないのは分かってる。
でも、今、話したかった。
「怖かったから──」
俺の声に、答えはすぐに返ってきた。
まだ机に突っ伏したままで、君はもぞりと動いた。
「怖かったから。だから話せなかった。音楽を私から取り上げられたら何も残らない、和樹先輩のそばにもいられないと、思った」
淡々とした口調で、茉麻ちゃんは言葉を紡いだ。
何の抑揚もなく、ただ紙に書かれた台詞でも読むように。