音色を描いて
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歌のレッスン。
ダンスのレッスン。
台本の通読。
まだまだ他にもやらなければいけないことはたくさんある。
それでも自分で望んだことだし、やりがいもある。
どこまでいけるのかはわからない。
それでももっと先へ。
高みへ。
やれることは全部やっておきたい。
「それじゃあ次の撮影のコンセプトは今話したとおりでお願いします」
「わかりました。よろしかお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。一緒に良いものを作り上げましょう」
その場に立ち上がり、向かい側に座っていた若いカメラマン──それでも自分よりは年上だけど──と握手を交わす。
小一時間の打ち合わせのはずが、議論が白熱してかなり話し込んでしまった。
どうやらそれは向こうも同じように思っていたようで。
「遅い時間まですいませんでした。この後のご予定は大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ご心配いただいてすいません」
「それでは本日はこれで失礼いたします」
カメラマンは深く頭を下げ、こちらもそれに倣う。
マネージャーとともにカメラマンを見送ってから、俺は小さくため息をこぼした。
それを見たマネージャーは申し訳なさそうに眉根を寄せた。
「すいません。辻さんだけ少し過密スケジュール気味になってしまって…」
「いえ、大丈夫です。最後の打ち合わせが長引いたのも、俺が言いたいこと言ったからなので」
妥協はしたくない。
いつだって全力で。
いつだって本気で。
その時々の全てをもってぶつかりたいから。
「でも彼女さんには少し申し訳ないことをしてしまいました。せっかくの辻さんの誕生日なのに、こんな時間までお待たせしてしまって…」
「だから、あいつは彼女じゃ──」
彼女じゃないって何度も言ってるじゃないですか。
そう言おうとした言葉は半ばほどで飲み込まれた。
今、なんて。
“こんな時間までお待たせして”?