蒼穹への祈り
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私自身褒められ慣れていないから、緊張するし嬉しくもあるけれど、顔には出さないように努めた。
心臓が早く脈打って、ともすれば恥ずかしさで顔を背けてしまいそうになるけれど、今はアルトの言葉の続きを知りたい。
可愛いでも綺麗でもなく、シェリルの衣装に身を包んだ私を、アルトがどんな風に思っているのか。
「個人的にはやっぱり実家に来たときに着てもらった着物の方が──」
そこまで言いかけて、アルトの顔がぼっ、という音が聞こえてきそうなほどに赤くなった。
視線はまだ私の方を向いていたけれど、心ここにあらず、といった感じだ。
もしかしたら以前にアルトの実家を訪れたときに着させてもらった着物の姿を今の私に重ねて見ているのかもしれない。
淡い水色の生地に辻が花の絞り染めが施された着物。
着物には疎い私だけれども、その着物がとても高価なもので、とても美しい物だということくらいは理解できた。
確かあの時アルトはそんなに褒めてくれなかったと記憶している。
だからどちらかというと、着物は私には似合わないのだとそのときに思ったような記憶がある。
でも今のアルトの反応から察するに、「綺麗だし可愛くもある」シェリルの射手座の軍服の衣装よりも、以前着た着物の方が私に似合っている、ということになる。
ああ、あのときアルトは着物を着た私を見て、本当はどんな気持ちを抱いていたんだろう。
今すぐ問いただしたい気持ちにかられる。
「似合ってる…」
「どっちが?」
自分でも本当に意地悪になったと思う。
昔の自分はこんなではなかった、はずだ。
色んな人に出会って、色んなものに触れて。
そうして今の私になった。
辛いことも、悲しいこともたくさん経験した。
でもそれ以上に、嬉しくて、幸せな思いを知った。
まあ、でもアルトをからかいたくなるのは、間違いなくシェリルの影響だとは思うけれど。
「…どっちも」
「…そかそか」
「なんだよ、それ」
「嬉しさを噛み締めてる」
お互いの距離が縮まって、今までは言えなかったことも、少しだけ言えるようになった。
まだまだアルトに伝えられていないこともあるけれど、いつか少しずつでも話せるようになりたい。
明日のことなんてわからない私たちだけれど、それでも。
「…今度アルトサイズはどうですか?ってシェリルに聞いてみようかな」
「絶対やめろ」
「そう?私よりも君の方が似合うと思うんだけどな」
《終》