あなたの奏でる音色
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俺は躍起になって茉麻ちゃんの姿を探した。
いつもならすぐに見つかるはずなのに、今日に、探している時に限ってこの広すぎる学園の中から探し出すことが出来ない。
屋上も探した。
彼女が気に入っている噴水の近くの場所も探した。
でもどこにも茉麻ちゃんの姿はなかった。
それでも俺は走ることだけはやめなかった。
体力的には何の心配もしていない。
中学の時には陸上をやっていたし、元々体力には自信がある。
「おーい!!土浦!!」
俺はサッカーをしている土浦をグラウンドで偶然見つけて大声を張り上げた。
その声を聞きつけた土浦は一瞬だけ嫌そうな表情を浮かべたけれど、すぐに俺のところに駆け寄ってきてくれた。
さすがは運動部の後輩。
そういうところはしっかりしてる。
「どうしたんすか、火原先輩?」
「今日って茉麻ちゃん学校来てる?」
「日暮ですか?来てましたよ。普通に授業受けてたし」
これでとりあえず学校に来ているということだけは分かった。
問題はどこにいるか、だ。
「どこにいるか知らない?」
「いや、知りませんよ。俺が日暮の行動をいちいち把握してるわけじゃないんですから。俺よりもあいつの行きそうな場所なら火原先輩の方がよく分かってるんじゃないんですか?」
確かに、言われてみればそうだ。
土浦が茉麻ちゃんの昼休みの行動まで知ってるほうがおかしい。
俺は焦りすぎてそんな簡単なことにも気づくことが出来なかった。
「なんか、緊急の用事ですか?」
「うーん、緊急っていうかなんていうか……とりあえず大事な話であることに変わりはないと思うんだけど……」
俺は茉麻ちゃんを探している理由を正直に土浦に話すことを躊躇った。
もしかしたら、茉麻ちゃんは、あの秘密を誰にも話すつもりはなかったんじゃないのかと思って。
もしそうなら、俺がその秘密をみんなに話してしまうわけにはいかない。
俺は曖昧に笑って、とりあえずはごまかした。
土浦は訝しげな表情を浮かべていたけれど、それ以上追求してくるようなことはなかった。