右手に太刀を左手に君の手を
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
千里は誰よりも寂しがり屋だった。
誰かを失う事を恐れ、だからこそ誰よりも勝つ事に貪欲だった。
御館様が天下を取れば、もう誰も一人で悲しむ事はなくなると信じていたから。
鮮やかに戦場を駆け抜ける姿を、いつか誰かが舞姫のようだと喩えていた。
そして幸村もその通りだと思っていた。
『そのような言葉……私にはあまりにも畏れ多いです』
彼女は謙遜してそう答えていた。
それでも彼女はそれに傲ることなく、次々と勲功を挙げていった。
千里の事なら、どんな事でも今すぐに思い描く事が出来る。
ころころとよく変わる表情も。
彼女の少し高い体温も。
あどけない表情の奥に秘められた悲しみや絶望も。
決して打ち砕く事の出来ぬ、秘められた闘志も。
そして時折見せる女性らしい一面も。
何もかも、まだ新しいものだ。
そして、これから先も、ずっと見守り続けたいものなのだ。
幸村は静かに部屋を後にした。
次に此処に戻る時は、もう一度千里の幸せそうな表情を見る時だと、胸に誓って。
目を閉じれば
君の笑顔が鮮やかに甦る
例え今は離れた場所にいても
君のその名残だけで
私はまだ生きていけるから──
《終》