右手に太刀を左手に君の手を
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幸村はそっと千里の輪郭を指先でなぞった。
こんな風に触れれば、千里はいつも頬を染めて擽ったそうにしていたものだった。
だが今は、何の反応も示さない。
ただ静かに呼吸を繰り返すだけだ。
千里は特にくのいちと仲が良かった。
人見知りの激しい千里を、くのいちがいつもそこら中を連れ回していた。
しかしそれでもくのいちはあまりこの千里の居る部屋へ来る事はなかった。
幸村は初めこそくのいちを薄情な女だと思っていた。
大切な友人が大変な目にあったというのに、見舞いにも来ない、と。
しかし実際はそうではなかったのだ。
彼女は彼女で、どうすれば千里を助ける事が出来るのか、駆けずり回ってその方法を探し求めていたのだ。
「千里……そなたが目を覚ましたら、私をきっと怒るのだろうな」
何をしているのですか、幸村様!
大きな瞳を吊り上げ、頬を膨らませながら、そんな風に言うのだろう。
千里が怒りを露わにする時は、いつだって誰かの為を思ってだった。
幸村を思って。
くのいちを思って。