右手に太刀を左手に君の手を
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くのいちは千里の横に座したまま、そっと彼女を見下ろす幸村の姿に小さく溜息を零す。
情けない、とさえ正直思った。
酷い太刀傷で、臓器もかなり危ない状態であった。
失血も酷く、それこそ命があっただけでも奇跡だと思われる程の怪我だった。
それでも、千里は生きている。
生きているという表現がはたして適切であるかどうかは分からない。
しかし、彼女は確かに息をしているのだ。
まだ温かいのだ。
それならまだ打つべき手はあるはずだ。
ただ悲しみに暮れて、千里の側に寄り添っている事が得策だとは到底言えなかった。
寧ろ時間の無駄とさえ思う。
「……つまんないの。私は御館様の命令でちょっと越後まで行ってきちゃいますからねー」
「越後……?」
幸村が幾つか問い掛けようと振り返った時には、其処には既にくのいちの姿はなかった。
さすが忍だけあって、無駄口が多い所はあるが仕事や任務は正確にこなしていた。
幸村はくのいちが口にした“越後”という言葉が気に掛かっていた。
越後と言えば越後の龍。
上杉謙信。
彼に助けを求めようとでもいうのだろうか。