右手に太刀を左手に君の手を
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少女は名を千里と言った。
まだ女性と呼ぶにはあまりに幼く、少女特有の危うさを秘めていた。
ただそれでも彼女の武士としての力量は、幸村や他の名だたる武将達でさえ賞賛する程であった。
彼女が一度戦場へ赴けば、兵達の士気は格段に上がった。
千里の存在は、武田軍にとってはなくてはならない存在となっていた。
そして、それ以上に幸村にとっては千里の存在は掛け替えのないものであったのだ。
それこそ、自分の命よりも大切な。
きっと千里にとっては幸村の存在もそうであったのだろう。
だからこそ、千里は幸村を狙う凶刃から身を挺して彼を守ったのだ。
だが、千里は自らの行動が招くこの結末を予想していただろうか。
いやきっとしていなかったに違いない。
「千里がこうなってしまったのは、私の責任だ。私が常に傍らに寄り添うのが道理だろう……」
漸く幸村は言葉を紡いだ。
覇気の全く籠もらない声。
生きながらにして死人のように感じるのは、千里ではなく幸村の方かも知れないと、くのいちは思わずにはいられなかった。