右手に太刀を左手に君の手を
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幸村とくのいちは上田城の一室に居た。
城の人間でも簡単には出入りを許されていないその部屋は、庭に面しており、窓からは仄明るい月の光が差し込んでいた。
そして青白さを帯びたその光は褥に横たわる一人の少女を静かに照らしていた。
「また、此処にいたんですね、幸村様」
「………」
くのいちは意を決して唇を動かし言葉を紡ぎ出すが、幸村は沈黙を守った。
元来真田幸村という男はこのように寡黙な男ではなかった。
かと言って饒舌な訳ではなかったが、少なくともくのいちの目にはもっと活き活きとしていて、輝いた男として映っていた。
それがたった一日にして。
たった一瞬にして。
真田幸村は変わってしまった──
要因はたった一人の少女の“死”
正確には死、とは呼べないのかも知れない。
身体的な問題でいうならば、少女の体はまだ生きているのだから。
先の戦で幸村をかばった少女は、何とか一命を取り留めたものの、その瞳を開く事はなかった。