神と人の綾なす物語
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狗奴を率いて、果敢に先陣を切る彼。
そんな彼にこんな一面があると誰が知っているだろう。
きっと、私だけなんじゃないだろうか。
そう思うと、何だか嬉しい。
「ねぇ、忍人。君は、“これから”を求める?」
「…君の言葉は、いつも理解しかねる」
「橿原宮奪取は、“終わり”ではない、って事。君は、其処に目標を設定していない?」
だから、忍人は私を遠くに感じるんだ。
橿原宮を取り戻す事は、千尋や狭井君には悪いけど、私にとっては単なる通過点に過ぎない。
「私の終わりは其処じゃない。むしろ其処は始まりなの」
私の言葉に、忍人は私の体をぐっと押し返す。
忍人の温もりが少しずつ失われていくのが、少し寂しい。
でも今は、そんな事を言っている場合ではなかった。
「私はまだ、終われない。其処で立ち止まる訳にはいかないの。悲しみの連鎖が、私の前に続く限り」
忍人は真っ直ぐに私を見つめる。
互いに逸らす事なく、食い入るように。
「…その君の歩む道に、俺はいるか?」
彼が絞り出した声は抑揚がなく、まるで独り言のようにも思われた。
しかし内容は明らかに私に向けられたもので。
私はゆっくりと瞳を閉じ、ややあってから、僅かに唇を動かした。
正直な所、今私が見ている真実を忍人に話してよいものかどうか迷った。
きっと、私はまた忍人を傷付ける。
そう、思ったから。
でも、私は包み隠さずに話す事にした。
それが私に出来る、彼への精一杯の誠意の表し方だったから。