幼馴染みと恋人の境界線
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いつ見納めになっちゃうか分からないでしょ?
「は?」
俺は思わず口にしてしまった。
何が言いたいのか分からない。
見納め?
俺が?
「将臣がいつまでその姿でいられるのか分からないでしょ?あっちの世界にいたときは私の似顔絵くらいでしか記録に残せなかったけど、絶対何年かして振り返ったら面白いと思うんだよね」
人が元に戻れないことを楽しんでやがる…
昔から少し自分の世界を持ってるやつだとは思ってたけど、ここまで思い込みが激しいとは思いもしなかった。
いや、俺もどうしようもないほど困ってるってわけじゃねえけど、笑いものにされるのはどうも納得がいかない。
奏多だけに笑われるのならまだしも、さっきの奏多の口ぶり的にはそこには明らかに望美も譲も含まれてるぞ。
「お前…心配する振りしていつも楽しんでただろ。俺が一人だけ年食ってんの」
「んー?そんなことない…と思うよ?」
何だよ、その明らかな間は。
絶対馬鹿にしてるな。
自分が応龍の神子だからってちょっと調子乗ってるんじゃねぇか。
ここは一発ガツンと──
そう言おうとした時だった。
「もしも白龍と応龍の力が戻って、将臣の失われた時間が元に戻ったとしても、今こうして将臣を喋ってる時間が嘘じゃなかったって証明できるもの、ほしいからね」
唐突に真剣な口調でそう告げた。
狙っているのか無自覚なのか。
真摯な瞳は間違いなく本物で。
だけど、あの異世界に行く前の奏多では決して出来なかった瞳で。
俺たちは色んなものを知り過ぎた。
知らなくてもいいものもたくさん知った。
世界の醜さ、己の汚さ。
例え、俺の中の時間が戻されてしまったとしても、そういった俺の中の経験までが消えてしまうわけじゃない。
あの世界で起こったこと、俺が経験してきたことは紛れも無い現実なんだ。
奏多にそんなことを諭されるなんて、俺はやっぱりまだまだみたいだな。
「…お前もいろいろ考えてたんだな」
「ふふ、もう昔の私じゃないからね。…って事で、また写真撮ってもいい?」
無邪気な笑みを浮かべながら尋ねてくる奏多に俺は苦笑いを浮かべた。
やっぱりかなわないな、って思ってさ。
「ちょっとだけならな」
「えー!将臣の意地悪ー、ケチー!」
「ああ?文句言うなら撮らせねぇぞ!」
「いえっ、なんでもございません!」
こんなくだらないやり取りが続くのもきっともう少しの間だけなんだろう。
九郎たちが元の世界に戻るまで。
龍脈に正しく力が巡るまで。
それを奏多もちゃんと分かっているから。
だから俺は奏多を咎めることが出来ないんだろう。
あの戦いで誰よりも傷ついたのは奏多だと知ってるから。
でもやっぱりただで撮られてんのは納得いかねぇな…
何か対価をもらわねぇとな。
《終》