幼馴染みと恋人の境界線
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あの異世界の戦いの日々はあいつの働きかけのおかげで最高の形で終わりを迎えた。
俺が望んでいた戦いの終幕の形。
お前もそれを願ってくれていたんだと思うとやっぱり嬉しかったんだぜ?
《だって、いつ戻るか分からないから》
和議の場から俺たちは荼吉尼天を追って時空の狭間を越えて俺たちの元いた世界へとやってきた。
荼吉尼天を倒したのはいいものの、龍脈の穢れのおかげで白龍はまた道を創ることが出来なくなっていた。
だから九郎や敦盛たちは今俺の家に住んでいる。
さすがに現代の一つ屋根の下に朔を野郎共と一緒に住まわせるわけにはいかないと、奏多が朔だけは自分の家に連れて行った。
望美もそれが羨ましかったのか、最近はしょっちゅう奏多の家に入り浸っているみたいだった。
ま、ほとんどは俺たちの家に集合しているわけだから関係ないといえばあんまり関係ないんだけどな。
──カシャ
俺がリビングで一人物思いにふけっているとカメラのシャッターを切る音が聞こえた。
他のやつらはあの「迷宮」のことやらを探りに行っていたりして、今この家の中には俺と「あいつ」しかいない。
そもそも携帯で人の写真を撮るやつは今のところ一人しかいない。
しかも楽しんでやっているから余計にたちが悪い。
おまけに惚れた弱みってやつでなかなかその行動を諌めることも出来やしない。
俺はうんざりした眼差しでシャッター音が聞こえたほうへ視線を向けた。
「おい、奏多…人の許可無く写真撮るなって何度も言ってるだろ?」
「いいじゃん、隠れて撮ってるんじゃなくてこうして堂々と撮ってるんだから」
そういう問題か?
思わずそうつっこんでしまいそうになるのを抑えこんだ。
きっと今の奏多には何を言っても通用しないような気がして。
あの異世界に行って、三年以上ぶりに奏多や望美たちと再会して嬉しかった気持ちは今でも覚えてる。
でもいつからだったか…
奏多がこんな趣味?に走り出したのは──
春の京にいた時…はそうでもなかったか。
まあ時々絵のモデルを頼まれたりはしたような気がするけど、はっきり言って悠長に遊んでる暇なんて無かったからな。
俺も結構すぐに福原に帰っちまったし。
今のこの片鱗が現れ始めたのはあの夏の熊野か…
熊野川が氾濫して本宮に行けなくて。
勝浦の宿に足止め食らってた時期があったな。
あの頃から奏多の様子がどうもおかしくなったような気がしないでもない。
奏多はもともと写生をしたりするのが好きな方だっていうのは知ってたから、大して気に留めてはいなかったんだが…
「あのなぁ、奏多。俺は見世物じゃないんだぜ?」
俺がため息混じりにそう告げると、奏多は「分からない」って顔をする。
大きな薄紅色の瞳を少し見開いて小首を傾げている。
「そんなこと言われなくても分かってるよ?」
「じゃあなんで俺の写真ばっかり撮ってるんだよ?」
「将臣が好きだからに決まってるじゃん」
「……」
そこまではっきり言われてしまうとぐうの音も出ない。
むしろこっちの方が恥ずかしくなる。
こいつこんなやつだったか?
根本的な部分では少しも変わってないような気がするけど、あの世界に行ってからやっぱり少し「変」になった気がする。
変な部分で執着しているというか。
何かを失うことをひどく恐れているというか。
「それって理由になってなくね?」
「そう?立派な理由だと思うけど…じゃあ、こう言ったらいいのかな」
そう言って奏多がつむいだ言葉といえば──