幼馴染みと恋人の境界線
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俺は奏多の肩口に顔を埋める。
梅花の香りがほんのりと鼻をくすぐる。
抱き締める指先に力を込めると、奏多はそろそろと腕に手を伸ばしてきた。
「もしも、もしも私が平気じゃないって言ったら助けてくれるの?どんな時でも傍にいてくれるの?」
縋り付くような声に俺は唇を噛み締めずにはいられなかった。
どんな時でも傍にいると。
どんな時でもお前の味方だと。
そう言えたらどれほど楽だろう。
昔の俺なら、彼女のその言葉に間髪入れずに答えることができただろう。
躊躇いなどきっと存在しない。
でも、今の俺はそう答えてやることはできない。
自ら立てた誓いを破る訳にはいかないから。
「…それは…できない……」
俺の答えに、奏多はまるで俺が初めからそう答えるということを知っていたかのように小さく笑った。
それはほんの少し自嘲めいたもの含んでいて。
後ろから抱き締めたことだけが幸いだった。
今、顔は見られたくなかった。
「うん。そんな気は、してた。将臣はそういうヤツだから」
「どういうヤツだよ?」
「自分で決めたことは絶対にやり通すところとか。嘘、つけないところとか」
奏多はそう言いながら俺の腕を抓った。
しかもおもいきり。
「ってえ!!奏多、何すんだよ!?」
俺が思わず抱き締める腕の力を緩めると、ひょいっと奏多は俺の束縛から逃れた。
俺を正面から見つめる瞳は、きらきらと輝いていて。
強がっているのが目に見えて分かった。
「ずっとは一緒にいられないけど……でも一緒にいる時は私の味方でいてくれる?私がどんなに悪いことをしてても頑張れって励ましてくれる?」
「おいおい、どんなに悪いことって…」
「どうなのー?」
今度は逆に答えを急かし返されて、俺は仕方なく頷く。
どんな状況に立たされたとしても、俺はそれが奏多の選択なら受け入れるんだろう。
例え、周りの誰が反対したとしても。
「分かったよ。お前が決めた道なら俺は文句は言わねぇよ」
「ふふふ、ありがとう」
奏多は笑顔になってまた前を向いた。
だが前に歩を進めることはしない。
まだ何か言いたいことがあるらしい。
「だから、聞かないでおくね。将臣が、私たちに聞かれたくないこと」
「は?」
奏多の言葉の意味が俺にはよく分からなかった。
その口振りではまるで俺の秘密を奏多がすべて知っているかのようだった。
「なぁ、今何て言ったんだよ?」
「んー?秘密ー」
奏多が呟いた言葉は何度聞いても、答えてくれることはなかった。