神と人の綾なす物語
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紗綾は静かに立ち上がると、締め切られたままになっていたカーテンを勢いよく開け放った。
日はすっかり落ち、空には星が瞬いている。
その光景を見て、紗綾は満足そうに微笑む。
「紗綾?」
幼い頃から見守ってきたはずの少女。
いつだって、誰よりも近くにいるはずだった。
それなのに、ふとした時に何故かとても遠くに感じて。
全く知らない存在のように思われる。
「私が落ち込むと、誰よりも早く風早が側に来て、元気づけてくれるよね。いつも、ありがとう」
めいいっぱいの笑顔をこちらに向けて。
幸せそうな表情に。
俺はこうして君の側にある喜びを噛み締めるんだ。
「紗綾を放っておくなんて出来ないからね。それに、俺が落ち込んだら、紗綾が一番に慰めてくれるんでしょう?」
俺の言葉に、紗綾は少し悔しそうに眉を顰める。
どうやら図星らしい。
その仕草でさえ愛らしくて、俺は思わず笑ってしまう。
「…風早は、ずるい」
「紗綾は嘘が下手だね」
「嘘をつく必要、ないからね」
気の抜けたような安心しきった表情に、俺は紗綾の側に寄った。
そしてそっと彼女を抱き締めた。
理由なんてない。
ただ、そうしたくて。
これから先に待ち受ける現実を。
未来を、君はまだ知らない。
未来はきっと、君を傷付ける。
優しい君は何度も涙を流すことになるだろう。
分かっているから。
だから、その時は。
何があっても。
絶対に君の側にいて。
君を抱き締めよう。
《終》