神と人の綾なす物語
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「ひ、ひい、らぎ…?」
私の突然の抱擁に、紗綾は困惑しているようだった。
瞬きを繰り返しながら私を見上げる瞳に、戸惑いが見え隠れしている。
抱き締めた紗綾の躰は、いつか抱き締めた時よりもほんの少しふっくらとしていて。
貴女はそれを厭うのかも知れないけれど、私は安心せずにはいられなかった。
そして嬉しく思わずにはいられなかった。
紗綾が落ち着いて、幸せに暮らせる日々が、本当に訪れたという何よりの証だから。
橿原宮を奪取する前の貴女は、風前の灯火のようで、本当にか細く、折れてしまいそうだったから。
儚い、という言葉がまさにしっくりくるような。
そんな雰囲気を持っていた。
「慣れない世界に適応する為の、補正手段だったのでしょう」
「…そう、なのかな」
「貴女はちゃんと思い出してくださった。それだけで私は十分です。私は気にしておりませんよ」
耳元で低く囁くと、紗綾はぎゅ、と体を強張らせた。
どうやらまだこうした事に慣れていないらしい。
本当に可愛らしい姫君だと思う。