幼馴染みと恋人の境界線
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煮え切らない奏多の態度に俺は徐々に苛立ちを隠すことができなくなる。
話したくないことがあるというのは今の態度からすぐに理解できる。
それならそうと、言葉で返して欲しかった。
沈黙を守られることが何よりも苦痛に感じられた。
「おい、奏多。何とか言えよ」
俺が少し苛立ったような口調で奏多
の名を呼ぶと、一瞬奏多は肩を強張らせた。
そして空を振り仰ぐように首を傾けてから声をしぼり出した。
「どうして話さなくちゃいけないの?」
その声は震えていて。
今にも泣き出してしまいそうで。
さっきまで少し苛ついていたことを棚に上げて、俺は奏多の体を抱き締めた。
触れると壊れてしまいそうな気がしたけれど、手離してしまったら簡単に消えてしまいそうな奏多
をこのまま一人で立たせておくことはできそうになかった。
抵抗してくるかとも思ったが、奏多は俺の腕の中で大人しくしていた。
「言えないことだってあるよ。将臣にだってあるでしょ……?」
吹き付ける風に掻き消えてしまいそうなか細い声で奏多
は言葉を続けた。
俺は黙ったままそれを聞いていた。
確かに奏多の言うことはもっともだったからだ。
俺にも奏多や望美、譲に言えない秘密を隠している。
俺の手はもう真っ赤な血で汚れてしまっているということ。
そして。
還内府であるということ──
「私にだって秘密の一つや二つあるんだから。誰にも話せない悩みだってあるよ」
「お前はそれで平気なのかよ?」
俺が間髪要れずに返した言葉に、奏多は黙り込む。
それは奏多の中で未だに答えが出ていないから。
何か悩み事がある時はいつもそうだった。
何だって自分の内側に抑え込もうとしていた。
そうすることが一番正しいのだと信じて。