神と人の綾なす物語
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紗綾はややあってから、私と視線を絡ませた。
ほんの少し頼りない眼差しが、豊葦原を平和に導いた事が酷く昔のことのように錯覚させる。
あの頃、紗綾は決して今のような揺らいだ瞳を見せなかった。
そうすると、自分の心が折れてしまいそうになることを、彼女は誰よりもよく知っていたから。
「私、どうして忘れていたんだろう。柊のこと」
異なる時空。
風早が導いた世界。
あの場所に貴女が行くと分かった時、私は貴女に呪をした。
貴女と一時とはいえ袂を分かつ私を、紗綾には覚えていて欲しくなかった。
もう一度貴女が私を思い出すその時には、昔の私でいたかったから。
私の我儘だった。
それで貴女が悲しい瞳をしても。
私は呪を施したことを、決して後悔はしない。
「風早のことも、忍人のことも、羽張彦のことも。みんなのことはちゃんと覚えていたのに。どうして柊だけ…」
「…紗綾、どうかそんな悲しい顔をなさならいで。貴女の悲しさは私にも伝染しますから」
「柊……」
尚も憂いを帯びた眼差しのままの紗綾の体を、私はそっと抱き寄せた。