人ならざるものであっても
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「ヒノエ、頼みがある」
食事を済ませた後リビングでくつろいでいると敦盛がおずおずと声を掛けてきた。
敦盛の方からオレに話しかけてくるなんて珍しい。
話しかけて無視をされるようなことはもちろんないけれど、基本的に敦盛は積極的な方ではなかった。
むしろオレなんかは敦盛とはよく話をしている方だと思う。
最近では姫君の次に、かも知れないけれど。
「どうした、敦盛?お前がオレに頼みなんて珍しいね。もしかして姫君のことで相談かい?」
軽い口調でそう言えば、敦盛は驚いて目を見開く。
紫水晶の瞳は相変わらず綺麗で、昔と少しも変わらないな、とぼんやり思う。
そういえば姫君──奏多も言っていたっけ。
敦盛のこの澄んだ紫色の瞳が大好きだと。
見つめているとすぐに顔をそらされてしまうから、長い間見ることはできないけれど、敦盛の瞳に映り込む光や花がとても綺麗なんだと。
野郎の瞳を覗き込む趣味はないから確かめたことはないけど、きっと奏多の言うように美しいんだろうとは思う。
「ヒノエはやはりすごいな、私の考えなどお見通しなのか…」
「お前がオレにする相談事なんて大体予想がつくからね。で、どんなアドバイスをご所望で?」
望美に教えてもらったこちらの世界の言葉を織り交ぜる。
はじめこそ発音の仕方に戸惑ったりもしたけれど、慣れてさえしまえばどうということもなくなった。
敦盛もそれらの言葉を実際に口にしたりはしないけれど、一緒に習っているから言葉の意味は理解している。
オレが承諾したことに安堵の表情を浮かべながら、敦盛はオレがなんとか聞き取れる程度の小さな声で言葉を紡いだ。
「今度奏多と遊園地に行く時の服を見繕ってくれないだろうか」