幼馴染みと恋人の境界線
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「お前、すぐに謝るけどさ、我侭言う事ってそんなに悪い事じゃねえだろ?」
俺が耳元で囁くと、奏多はこそばそうに身をよじった。
「あんまり我侭言い過ぎるのはそれはそれで問題かもしれねえけど、俺は少なくとも、お前の我侭位ならどうって事ないぜ?」
「…一緒にいたいって言っても?」
「ああ。むしろ一緒にいたいって言われたら嬉しいに決まってるじゃねえか」
腕の中から見上げてくる無防備な奏多に俺は笑った。
気を遣う必要なんてどこにもない。
奏多はただありのままに振舞えばいいんだ。
「あー…そうだな。お前が目が覚めた時に一人が嫌だって言うんなら、お前が起きるまでベッドの中にいてやるよ」
その言葉を聞くなり、奏多の瞳がきらきらと輝きだした。
本当に嘘のつけない正直なやつだと思う。
「本当?本当に?」
子供のような屈託のない眼差しを向けられて、俺は衝動を押さえ込む。
ったく、毎日毎日心臓に悪い。
「ああ。俺が嘘ついた事なんてないだろ?」
「うん」
「そのかわり、起きてすぐに飯食えないからって文句いうなよな」
「うん!」
奏多はさっきまでの不機嫌はどこへやら、嬉しそうに俺をまた抱き締め返した。
つくづく不器用なやつだと思う。
だけどそんな所も可愛らしいと思ってしまう自分は重症なのかも知れない。
いつの日だったか、奏多がポツリと呟いたことがある。
その時の俺には何のことだか分からなかったけれど。
あるいは今なら、少しは分かるような気がする。
「私たちって常に何かに囚われて生きてるんだね」
奏多の言葉の真意は分からない。
ただそれでもはっきりと言える事がある。
俺を囚えているのは、
奏多
お前なんだ──
《終》