幼馴染みと恋人の境界線
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──ぱたん
俺が機嫌よく朝食作りに勤しんでいると、扉が閉まる音が後方から聞こえてくる。
この家には奏多と俺しか住んでいない。
つまり、俺が此処にいるという事は扉を閉めたのは必然的に奏多だ、という事になる。
それにしても珍しい事もあるもんだな。
奏多が俺が起こしに行く前に起きてくるなんて。
これも俺と奏多が異世界に行って、変わってしまった事の一つ。
あの世界の朝はやたらに早かった。
始めこそ慣れなかったものの、1ヶ月も経つ頃には目覚まし時計なしで起きられるようにもなった。
そりゃあ奏多と一緒に行動してる時は安心して寝坊することもたまに…いや、よくあったけどさ。
その名残で俺は今でも時々やたらな早く目が覚める。
だが、奏多は全く逆のようだった。
異世界で殆ど眠る事が出来なかった分、今それを取り戻そうとでもしているかのように眠っている。
俺が側にいる事が関係しているかどうかは、全然分からないけどな。
「お、、今日は早いじゃ──」
俺は言いかけた言葉を思わず飲み込んだ。
まだ虚ろなままの奏多の瞳から涙が零れ落ちていたから──
俺は慌ててコンロの火を止めて奏多に駆け寄った。
「おい、奏多、どうしたんだよ?腹かどっか痛いのか?」
虚ろな眼差しのまま何処ともつかぬ場所を見つめていた奏多だったが、俺の声が耳に届くとぴくんと体を反応させた。
そしてそのまま勢いよく俺の体に抱きついてきた。
腕と指先に力が込められているのが俺にも伝わってくる。
奏多は何も言わないままでしがみついている。
「おーい、ちゃんと言わないと分からねえって」
俺がそう言って宥めようと試みてみても、奏多はただ首を横に振るばかりだった。