幼馴染みと恋人の境界線
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
将臣は未だ眠る愛し眠り姫の額に口付けを落とす。
奏多の眠りを妨げるつもりはない。
ただ、それでも触れたかった。
大切に思っているから。
奏多の握り締めている指を、起こしてしまわないようにゆっくりと解く。
離すまいとしているのが将臣にもひしひしと伝わってくる。
しっかりと服を掴むその小さく細い指に、将臣は苦笑いを浮かべる。
どれ位寂しい思い、させてたんだろうな。
自分の事に精一杯で、少しも構ってやれなかった。
京や熊野で一緒にいられても、俺はすぐに平家に戻ってしまっていたから。
奏多を大切に思っていなかった訳じゃない。
何が一番大切なのか、あの時の俺は理解出来ていなかったんだ。
側にあるものが最も大切で守らなければならないと思っていた。
それが俺を拾ってくれた皆に対して返してやれる唯一の事だと信じていたから。
俺は奏多の広く、深い優しさと愛に甘えていたんだ。
「私は大丈夫だから。だから将臣も頑張れ」
そう言って笑顔で送り出してくれるから。
だから俺は躊躇わずに前だけを見て進む事が出来たんだ。
お前がどんな気持ちで俺の事を見送っていたのか考えなかった訳じゃない。
寂しい思いをさせていたのもちゃんと、知ってる。
だからこれから先は俺がお前の為に出来る事なら何だってしよう。
お前は少しも願いを言わないし、甘えてもこないから、俺が多少強引に世話焼く位が丁度いいんだろう。
何とか奏多の指を解いた俺は音を立てないようにベッドから出る。
大きな二人用の羽毛布団を体に掛けてやってから、俺は寝室を後にした。
廊下に出てから大きく伸びをする。
小さな小窓から差し込む柔らかい日差し。
もう少しくらいなら寝てても良かったかもな。
今更ほんの少し後悔して、俺はキッチンへ向かう。
何か作ってその後に奏多を起こしに行こうと思った。
あいつ、見掛けに寄らず、朝から大飯食らいだからな…