あなたの笑顔を見るまでは
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私は逆鱗に触れ、そっと力を込める。
神力ではない。
ただの、圧力。
それを見た泰衡さんは驚愕する。
「奏多、自分が何をしているか───」
「…分かっています……!!」
それは神への冒涜。
彼らの神子として、絶対にしてはならない事。
でも。
私達は神子である前に一人の人間だ。
何においても譲れない、人としての願いだって当然ある。
神に逆らっても。
私には手に入れたいものがある。
「これがあるから、私達は終わりのない苦しみから抜け出せない。いつまでも偽りの希望に縋りついてしまう」
「偽り…」
「逆鱗を使って未来を手にしても、私、きっと嬉しくない。誰かの力じゃなくて、私は自分の力で手にしたい。綺麗事だと、分かっていても」
「…逃げるな、ということか?」
泰衡さんの言葉に、私は一度だけ頷く。
一度だけではあったけれど、深く、しっかりと。
「私はもう、何処にも行かないし、何処へも行けません。泰衡さんとの思い出を知らない私だけど…それでも貴方は──」
「皆まで言わずとも分かっている」
そう言った泰衡さんの顔に、もう悲嘆の色はなくて。
私はただ微笑む事しか出来なかった。
それでも貴方は
私と共に生きてくれますか?
失う恐怖が常につきまとうこの運命を
誰よりも気高く
誰よりも強かに
いつか貴方が夢見た未来を
現実のものにする為に──
《終》