あなたの笑顔を見るまでは
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心臓が高鳴る。
どくどくどくどくと、鼓動が体中を侵食していく。
彼が握り締めている物は、何となく予想が出来る。
でも認めたくない、否定したい。
私のそんな葛藤を余所に、泰衡さんの指先が解かれていく。
そしてゆっくりと現れるのは、私の予想通りの物。
光を宿さぬ白龍の逆鱗だった──
「貴女は何度もこの逆鱗の力で時空を越え、運命を上書きしてきた」
「………」
「貴女が覚えていなくても、確かに貴女が俺に語った事だ」
心臓が破裂しそうだ。
背中には変な汗をかいて気持ち悪い。
何も言えない私を見下ろしながら、泰衡さんははっきりと言った。
さらに信じられない言葉を。
「俺は貴方を救う為にこの逆鱗を使い時空を越え……そして貴女はいつも、俺の前からいなくなる──」
思わず耳を疑いたくなった。
泰衡さんが時空を越えた?
そして私は何度も泰衡さんを置き去りにする?
そんな事、私にはした記憶はないのに。
「奏多、俺の言う事が信じられないか?」
穏やかな口調。
それでもどこか冷ややかな。
それは貴方との約束を違えてばかりの私への苛立ちなんだろうか。
私は泰衡さんの言葉を、必死に首を左右に振って否定する。
「……だって、私は───」
貴方を置き去りになんてしない。
だって私は貴方を助けたくて何度も時空跳躍を繰り返し、この平泉を訪れたというのに。
貴方と出会って。
貴方と共に戦って。
貴方の愛している、この平泉を守る。
だからかつての部下や仲間さえ、この手に掛けてきたのに。
それなのに。
その私が貴方を諦めたっていうの?
「貴女は全てを投げ出した訳ではない。貴女はいつも聡明で勇ましく、私と共に戦ってくれた」
泰衡さんがゆっくりと、溜息と共に吐き出した言葉に私は安堵する。
私が戦い続けていたという事実を知って。
でも、肩を撫で下ろした私を見て、泰衡さんは表情を曇らせる。
私といる時にはあまり見せない眉間の皺を一層深くする。
それだけでびりびりと伝わってきた。
泰衡さんが、怒っていること──