あなたの笑顔を見るまでは
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「泰衡さん、私は何処にも行きません。貴方の側に居ます」
「ああ…そうだ」
「私の言葉は、まだ貴方の信頼を得るには至りませんか?」
真っ直ぐに見つめれば、漆黒の瞳が切なく揺れる。
どうして、貴方がそんな表情をするの?
泣きたいのは、私だ。
この屋敷に閉じ込められ、外に出る事を許されず。
仲間に逢う事も禁じられ。
ただもどかしさに歯がゆさを感じながら、ゆるゆると日々を過ごしていた。
こんな事をしている暇なんてない。
鎌倉の軍勢が。
あの荼吉尼天が攻めてくる。
この平泉を守る為には。
泰衡さんを守る為には。
私が剣を取り、龍神の神子としての神力を用いて戦うしかないのだ。
「貴女の言葉は信じられない」
逸らされた瞳と、残酷な言葉。
どうして私の言葉は貴方に届かないのだろう。
私は、何か彼に疑われる事をしただろうか。
そんな事をしたつもりはない。
でも貴方は頑なに私の言葉を信じない。
まるで、かつて私が貴方を裏切った事があるような。
貴方はそんな眼差しで私を見据えるんだ。
私がそっと目を伏せれば、泰衡さんに抱き締められる。
優しい香の香りに包まれて瞼を閉じる。
貴方は本当にずるい人。
優しくされたら私が逆らえない事を知っていて。
いつも私を抱き寄せるんだ。
「応龍の力宿りし、真白き龍の逆鱗」
彼の身体に身を委ねていた私の耳元で囁かれる言葉。
予想だにしなかった言葉に、私は思わず目を見開く。
何故。
何故、泰衡さんがその言葉を。
白龍の逆鱗の存在を知っているの。
私は泰衡さんに白龍の逆鱗の話はしていない。
ううん、誰にも話していない。
心配をかけたくなくて。
知っているのは、特定の時空の望美と、リズ先生だけ。
二人だけの筈だ。
時空を歪め、禁忌を犯す覚悟を決めた者だけだ。
「な、何を…言っているんですか…?」
「時空を越える力を持つ白龍の逆鱗」
確信を持って紡がれた言葉。
かまをかけている訳ではなさそうだった。
彼の声色から、それ位の事は判断出来る。
私が言葉に詰まっていれば、そっと身体が離される。
そして泰衡さんはゆっくりと私に握りしめられた右手を差し出した。