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閉じ込めて
閉じ込めて
其処から一歩も出られないように
羽根を千切るのは可哀想だから
せめて其処で
じっと大人しくしていて──
《小さな窓から》
私に与えられた部屋。
一人には十分過ぎる広さ。
質素な造りではあるけれど、全てが整えられていて、何も不自由はない。
でも。
此処は体の良い牢獄。
あの人から私に与えられたもの。
あの人が私を愛してくれている、何よりの証。
広すぎる部屋の中央に座し、今日も私はただぼんやりと日々が過ぎるのを待つ。
この場所から解放される、そんな叶わぬ夢を脳裏に思い描きながら。
「奏多様、お食事をお持ち致しました」
部屋にあるたった一つの扉が声と共にゆっくりと開かれた。
柔らかな声と、空腹をどうしようもなく自覚させる煮物の甘い香り。
ゆっくりと顔を上げれば、銀が居た。
私に食事を運ぶのは銀の役目。
私がちゃんと食事を口にしたかを確かめるのも銀の役目。
あの人──泰衡さんに命じられて。
この部屋を与えられたばかりの頃は食事もろくに喉を通らなかった。
怖くて。
不安で。
でもそんな日が幾度か続くと、銀が酷い怪我をしている事に気付いた。
銀は決して話さないけれど。
それはきっと泰衡さんに傷付けられたもの。
私も銀も。
泰衡さんにとってはただの“物”に過ぎないのだ。
それを理解しているのに。
私も銀も彼から離れる事が出来ない。
彼の側に居たいとさえ願ってしまう。
辛いだけなのに。
苦しいだけなのに。
もしかしたら、と心のどこかで期待してしまう。
「いつも、ありがとう。銀」
「いえ、奏多様にお食事をお持ちし、御身をお守りする事。それが私が泰衡様より与えられた命でございますから」
くたびれた笑みを浮かべあって、視線を交わらせる。
このやりとりに意味がない事を理解しながら。