目に見えぬ絆を胸に
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***
私の返事に満面の笑みを浮かべた重衡さんは、私の腕を引いて宴会の間を後にした。
二日連続でこうなるとはさすがに予想していなかった。
いや、知盛に対してそういう祝い方をしてしまった時点で、今日のことは多少考えておくべきだったのかも知れない。
知盛には有無を言わさず無人島に拉致された。
一体重衡さんにはどんな目に遭わさせられるんだろう…
重衡さんに腕を引かれながら、思い付く限りの最悪な事態を予想していれば、重衡さんはいきなり立ち止まった。
まさか止まるとは思っていなかった私は思い切り重衡さんの背中に顔をぶつけてしまった。
「いたたた…」
「すみません、大丈夫ですか、奏多さん?」
重衡さんは心配そうに私の顔を覗き込む。
透き通る紫水晶の瞳で見詰められて、私は思わず恥ずかしくなって目を逸らす。
見詰められるのは少しずつ慣れてきたけれども、それでもやはり重衡さんのような美形に不意打ちで見詰められると照れてしまう。
「だ、大丈夫です。前、見てなかった私が悪いですから」
尚も私の鼻の辺りを心配そうに見詰める重衡さんの視線から逃れたくて、私はきょろきょろと辺りを見回した。
何処に連れて来られてしまったのかと思っていたけれど、そこは私もよく知る雪見御所の離れの縁側だった。
「重衡さん、ここって…」
「ええ。お屋敷の中ですよ」
「……」
「何処かに出掛けるものだと思っていらっしゃいましたか?」
「うん、そう思ってた」
そんな私の慌てた間抜けな表情を見て、重衡さんはくすくすと笑った。
普通に考えたら失礼な行為だと思うのに、重衡さんがすると少しも嫌みな感じがしない。
刺がないというか何というか。
不思議と重衡さんに笑われても嫌な気分になったりはしなかった。
「ふふ、奏多さんは慌てた表情ですらお可愛らしい…恥ずかしがらずに、さあ、こちらへ」
優しく肩を抱かれて、私は結局大した抵抗をすることもなく重衡さんに膝枕されてしまった。
私、まだ男の人に膝枕なんてしたことないのに。
「今日、重衡さんの誕生日なんだよ?」
「ええ、分かっておりますよ」
「…普通は私に膝枕してください、になるんじゃない?」
「?そうなのですか?」
「…少なくとも、私の世界ではそうかな」
将臣あたりは膝枕してもらったらすごく喜びそうな気がする。
譲は…どうだろう。
それでも、大抵の男子は好きな子に膝枕をしてもらったら喜ぶんじゃないだろうか。