目に見えぬ絆を胸に
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私はすぐに将臣の姿を探した。
今日もきっと、将臣の差し金に違いないと思ったからだ。
将臣に言われて重衡さんは私のところに来たに違いない。
そう思って将臣を探せば、将臣は知盛と一緒にお酒を飲んでいた。
それも楽しそうに、我関せずで。
怒気を込めた視線を送れば、将臣はすぐに気付いたようで顔をこちらに向けた。
“あんたのせい?”
口パクで言えば、将臣は首を振る。
昨日のことは認めていたが、今日は違うと言いたいらしい。
それなら、重衡さんは何故ここに来たのだろう。
私は将臣から視線を戻し、私の前でにこにこしている重衡さんに尋ねた。
答えを聞くのが怖くてたまらなかったけれど、それを聞かないことには始まらない。
「し、重衡さん…私にお願いって何でしょう?」
笑顔とは到底言えない苦笑いを貼付けたままの私に、重衡さんはとどめの一撃を放ってきた。
それはもう清々しいほどの煌めいた笑みを浮かべて。
「今日一日、奏多さんの時間を、私にくださいませんか?」
昨日とまるで同じ展開。
昨日は私の意志などまるでお構いなしだったけど、今回は一応は私の意志を尊重してくれるようだ。
さすがは重衡さん、といったところだろうか。
兄とは大違いだ。
しかし兄弟であることは間違いなくて。
プレゼントに想像を超えるものを要求してくるあたりはさすがだ。
「…何を、するつもりなの?」
重衡さんのことだ、いかがわしい内容ではないことはなんとなく分かるけれど、それでも不安であることに変わりはない。
時間を与える、ということはつまりそういうことだ。
その時間の間に何をされたとしても、一度許容してしまったのだから文句を言うことは出来ない。
だから返答は慎重にしなければならない。
私の問いに対して、重衡さんは笑顔を崩すことなく言った。
「秘密、です」
ずるい。
美形ってずるい。
可愛い顔で秘密、なんて言われてしまったら、それ以上追及することが出来ないじゃないか。
彼はそれを知っていてやっているんだろうか。
もしそうだとしたら、弁慶さん顔負けの腹黒さだと思う。
でも、今目の前にいる重衡さんからはそんな感じは一切しない。
というかして欲しくない。
昨日はなんだかんだで私は知盛とほぼ丸一日一緒に過ごした。
同じことを重衡さんは望んでいて。
知盛にはオーケイしたのに、重衡さんには駄目、というのは不公平かも知れない。
何が公平で、何が不公平なのか、基準さえもはや分からないけれど。
「…私で良ければ、お付き合いさせていただきます」