目に見えぬ絆を胸に
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生きている
私はまだ、生きている
皆は私を置き去りに死んでいくのに
私一人がいつも
のうのうと生き延びている
そんなの、許せないの
だから生きる事を義務付けられるなら
私に目一杯の痛みを頂戴──
《生きている実感を》
「奏多様でしたら心配はございません。手当てを行い、今はお休みになっておられます」
「そうか……」
沈んだ声は九郎さん。
状況説明をしているのは銀。
銀にそう説明するように言ったのは私。
とにかく私は今、九郎さんに会うつもりは毛頭無かった。
「奏多様が目覚められましたら、九郎様がおいでになった事をお伝え致します。何か言伝はございますか?」
「……いや、また頃合を見計らって足を運ぶ事にする」
「かしこまりました」
九郎さんは何か言いたげではあったけれど、奏多を頼む、そう言い残してその場を後にした。
銀はそんな彼の背を見送り、その姿が完全に見えなくなってから部屋へと戻った。
「本当に宜しかったのですか、奏多様」
銀は褥の傍らに腰を下ろし、静かに言葉を紡ぐ。
それを合図にして私はゆっくりと閉じていた瞼を持ち上げた。
眠っているふり、というのも意外に疲れる。
狸寝入りが出来る人を正直尊敬する。
上体を起こし、乱れた髪を整えながら私は呟く。
「いいの。九郎さんのお小言はまだ聞きたくないから」
冗談半分で言えば、銀はくすくすと笑い声を漏らす。
上品な笑い方は、どうやら身体に染み付いたものであるらしい。
記憶を失ってはいても、さすがは平重衡といったところか。
私は漸く血の止まった腹部をさする。
この傷は怨霊との戦いの際に九郎さんを庇った時に負ったものだ。
血は思っていたよりも大量に出たけれど、致命傷には程遠い。
先程の九郎さんの深刻な声色は心配のしすぎというものだ。
別に九郎さんが自分を責める必要はない。
だって私が庇いたくて勝手に庇ったのだから。