キミと私とあなたがいれば
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彼女はいつも弱音を吐いたりはしない。
いつも自分の内側に溜め込んで、一人で何とかしようとしていた。
自分が傷つくことを全く省みずに。
だからこそ、彼女に惹かれずにはいられなかった。
だから彼女を愛しいと思わずにはいられなかった。
「ん?」
あどけない表情は将臣が昔から知る表情と全く変わっていなくて。
将臣は目を細めて奏多を見つめた。
この京に来て自分は変わった。
それと同じように応龍の神子としての奏多も将臣の知るものとは変わってしまった。
それを別段に悲しいことだとは思っていない。
だが、奏多が全てを背負おうとした時に、一番誰かの支えを必要としていた時に側に居てやれなかったことだけが悔やまれた。
何度彼女は一人で涙を流したのだろう。
何度彼女は一人で決意をしたのだろう。
「急にどうしたの?将臣も知盛も黙り込んじゃって」
「お前が……俺たちを見ていないからだ」
「私が、知盛たちを見ていない?」
奏多は知盛の言葉を反復する。
それは知盛の言葉の意味を理解していない証拠だ。
知盛は、自分の眼前で小動物のように小首を傾げている少女の顎にそっと手を当てる。
将臣には知盛の言いたい事が分かるか、彼の行動に目を見開きはしたが、それを咎めるような事はしなかった。
「知盛?言ってる事が……よく分からないよ……」
溜息混じりの声で、奏多は知盛と決して目を合わさずに言った。
それは彼女自身が朧げながらに、知盛の言葉を理解しているという証で。
賢才を持つ神子である奏多は分かっていながらも、そのたった一つの真実を拒絶しようとしているのだろう。
知盛は奏多のその態度が気に入らなかったのか、鋭い、ほんの少し怒気を含んだかのような視線を向けた。
きつく歪められた紫水晶の瞳に奏多は生唾を飲む。
この瞳に射抜かれると、抵抗したくても捕らわれてしまったかのように身動きが取れなくなってしまうのだ。
この人はいつも自分を捕らえて離さない──