目に見えぬ絆を胸に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
応龍の神子である奏多様が、最も気を許しているのが彼女だった。
同じ世界から望美様と三人、それはもう仲睦まじく、見ている此方もついつい頬を緩めてしまうほどだった。
しかしそれにしても朔様から私に話し掛けてこられるというのは珍しい。
「いかがなさいましたか、朔様」
「…ええ、少し。銀殿はこれからどちらへ?」
「恐れながら奏多様の所へ。朝餉の際に顔色が優れないように思われましたので、薬湯をお持ちしようかと」
私がそう告げれば、陰っていた朔様の顔がぱっと晴れやかなものになり、安堵したのだろうか肩をなで下ろす。
どうやら彼女も奏多様の事を気遣っていたようだ。
繊細な感性の持ち主である朔様は、それ故に人の心の動きに誰よりも敏感だった。
思慮深い彼女の事だ。
大方私に奏多様の加減を確認してもらいたいとでも思っていたのだろう。
しかし、それは誤りだ。
何故なら奏多様の悲しみの原因は私だ。
私があの男に似ているから。
ただ私という存在がいるだけで、あの清らなる方を苦しめてしまう。
いつも彼女には笑顔でいて欲しい。
誰よりも心からそう願っているのに。
「私もさっき奏多の部屋へ行ってみたのだけれど、大丈夫だから、の一点張りで……銀殿になら、奏多も少しは話してくれるのではないかと思って探していたの」
朔様の唇から紡ぎ出された言葉は、やはり私の予想通りの言葉で。
彼女の気持ちも分かるが、果たして元凶の私が赴いたところで、話してくれるかどうか。
しかしそれでも私は奏多様を求めずにはいられない。
拒絶されたとしても、私の心が彼女を求めてやまないから。
「そうでございましたか…ご期待に添えるかどうかは分かりませんが、行って参りましょう」
「良かった…それじゃあ銀殿、よろしくお願いします」
「かしこまりました。今日は冷えると女房から聞きました。朔様もお風邪など召されませんよう…」
「ええ、ありがとう」
朔様は満足そうに踵を返して去っていった。
彼女が角を曲がりその姿が見えなくなるまで見送った後、薬湯を手に奏多様の部屋へ急いだ。
***
「奏多様、いらっしゃいますでしょうか?銀でございます。薬湯をお持ち致しました」