目に見えぬ絆を胸に
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う、羨ましいなんて思っていませんよ。
今や私は奏多様と晴れて恋仲となったのですから。
そんな些末な事に、目くじらを立てたりは致しません。
「そういえば、どうなさったのですか?私に何か用事でもございましたか?」
私がそう尋ねれば、奏多様は不機嫌そうに眉根を寄せ、頬を膨らませる。
そんな怒った顔でさえ、本当に可愛らしくて愛おしい。
そんな事を口にすれば、貴女はますますご機嫌斜めになってしまうのでしょうけど。
奏多様は屈んだ状態のまま私を見つめ、小さく唇を動かす。
その小さな声は、集中しなければ昼間の喧騒に掻き消されてしまいそうだった。
「用事がなきゃ、銀に会いに来ちゃいけないの?用事がなきゃ、銀の名前を呼んじゃいけないの?」
まるで子供が駄々をこねるような口調。
危険な戦場を渡り歩いて来た神子様の御言葉とは、到底思えない。
それでもそれが彼女──奏多という存在なのだ。
圧倒的な強さの内側に、弱さと、幼さを内包している。
その微妙な均衡の上に彼女という存在は成り立っているのだ。
「いえ、ご機嫌を損ねてしまったのなら、申し訳ございません。言葉が悪かったですね」
「?」
「本当に嬉しいのですよ。貴女が私を探して下さっていたと思うと……ですが、奏多様の大切なお時間を奪ってしまったと……」
「ふふ、そんな事気にしないで。銀を探すのは楽しかったわ。冒険みたいで」
奏多様はにっこり微笑んで、私の手を取る。
意外に冷たい指先に、私はいつも心を痛めずにはいられない。
「ね、銀。泰衡さんの用事はもう終わったの?」
「はい。今し方終わった所でございます」
「他にお仕事はない?」
「はい、届け物を無事滞りなくお渡し出来れば、その後は自由にして良いと仰せつかっておりますので」
私の言葉に、奏多様は大きな団栗眼をきらきらと輝かせる。
女性というよりは、彼女にはまだ少女という表現が適切なように思われた。
奏多様は私の手を引くと、金にも手招きした。
「久し振りに、一緒にお散歩しませんか?」