目に見えぬ絆を胸に
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急に躯がずしりと重たくなるのを感じる。
力を使った代償はすぐに私の肉体と精神に顕著にあらわれる。
すぐに動きだすことが出来そうになかった私は未だ蝶が上昇するのを見上げていた。
「貴女は……」
小さな声が聞こえて私は顔だけを声の方へ向ける。
声は平家の陣の方から聞こえてきた。
一瞬嫌な考えが頭をよぎった。
殺される──
元の世界にいた時は全く考えなかったこと。
今この世界にいていつだって考えていること。
生きている時空が違えば考え方だって変わる。
元の世界にいる時は何もかもがくだらなくて、大好きな幼馴染みといても時々寂しかった。
離れていると私は本当に一人なんだと自覚せずにはいられないから。
生きていることが苦しくて仕方がなかった。
何をどうすればいいのかさえ分からなくて。
ただ切なかった。
やり場のない思いはどこかにぶつけることも出来なくて。
暗い気持ちが私の内側にどんどん抑圧されてくのを感じてた。
でも、この世界で「死」というものがとても身近なものだと知った。
人の命なんてものは本当にあっけない。
昔の誰かが書き残した、「生とは水のうたかたのようなものだ」という表現がまさにあてはまっているような気がした。
今日側にいて笑っていても明日になったら笑っても怒ってもくれない。
生きていることを当たり前に感じていた自分が少し恥ずかしかった。
だからいつも考えてしまう。
どう戦えば、どの選択をすれば私が、皆が生き延びられるのか。
誰にもいなくって欲しくないんだ。
だから私は戦う。
こんな所で死にたくなんてないから。
ふりかえって。
見つめたその先に。
銀糸の髪、紫水晶の軟らかい瞳。
十六夜の月明かりの下に佇む長身の影に。
私は上手く息が出来なかった──
「…しろ……がね…?」
震える喉から絞りだした声。
かすれて、今にも消えてしまいそうだった。
本当はこの名は呼ぶべきじゃない。
だって貴方は今銀ではない。
今は平重衡。
でも、私にとって貴方はやっぱり「銀」なんだ。