キミと私とあなたがいれば
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奏多は小さくその男の名を口にした。
「……知盛?」
「おいおい、有川。いきなり俺の奏多を抱き締めるとは…それ相応の覚悟は出来ているんだろうな」
知盛の言葉と態度に、将臣も鋭い眼差しを向ける。
だが、どちらも互いに全く引かなかった。
「お前こそ奏多の首に、痕残してんじゃねぇよ」
「クッ、俺の物だという証を付けて何が悪い」
奏多の躯はまた将臣に引っ張られ、ようやく解放された。
自由になったとはいえ、長身の二人に挟まれてしまっては身動きが出来なかった。
それでも奏多は、この二人の腕が大好きだった。
例え敵として対を成していた存在ではあったが、奏多にとっては何に代えても守りたい存在だった。
傷つかなかったと言えば、それは全くの嘘になる。
泣きたい時も、何度も何度もあった。
それでもその度に、定められた運命に流されず、それに屈さずに自分の手で切り開いてきたのは、単に二人を助けたいが為だった。
そして今彼らは奏多の傍にある。
傍にいて奏多という一人の存在を認め、求め、そして愛してくれている。
それだけが今の奏多を支えていた。
幸せであるというのに、ともすれば海へ還りたくなるのは何故なのか。
空に融けて、この場所から、縛り付けるものから、解き放たれたくなるのは何故なのだろう。
「「奏多?」」
将臣と知盛に同時に名を呼ばれて、奏多は意識をこちらへ取り戻す。
奏多の様子がおかしい事に、将臣と知盛は互いの顔を見合わせる。
自らの手で終わらせた源平の戦い。
人々を哀しい運命から解き放った美しき戦乙女、応龍の神子。
彼女の願いは叶えられた筈なのに、奏多の表情はいつも心なしか曇っているような気がしてならなかった。