目に見えぬ絆を胸に
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何も知らなかった私は何処?
何も知ろうとしなかった私は何処?
《ふりかえって》
答えは返ってこないと自分自身でよく分かっている。
何故なら答えを知っているのは他でもない、"私"だけなのだから。
何が正しくて何が間違っているのかさえもう分からなくて。
繰り返される運命を何度も巡って貴方を探している。
ただ貴方に逢いたいだけ。
ただ貴方に笑って欲しいだけ。
平泉で貴方と出会いたくない私は三草山で福原の雪見御所を攻めようとするヒノエや九郎さんを止めた。
貴方に出会えたのはあの時空であったけれど、あの運命は貴方を苦しめるから。
政子さんの思うままにはしたくない。
だって貴方は他の誰でもない、貴方のものなのだから。
だけど三草山を経正さんとの和解で終えてしまうといつも貴方には逢えない。
貴方は…何処にいるの?
私は陣から抜け出して三草川まで引き返していた。
どうしてそんな事をしたのかは分からない。
ただなんとなく見ておきたかった。
敦盛くんの哀しみを。
その爪痕を。
辺りにまだ放置されたままの死体。
こびりついた血の赤い色。
鼻をつく嫌な臭い。
怨霊は私と望美でほぼ全て封印した。
だから未だ此処にいるのは全て「ヒト」だったものなのである。
哀しい、苦しい。
確かに私はそれを今感じている。
でも、もう涙は枯れてしまって出なかった。
生温い川の水に手を浸す。
そんなことをしても私の血で汚れた手は綺麗にはならないと分かっている。
それでもいつも戦いの後に透き通る水に手を浸すのは私の癖のようになっていた。
こんな酷い戦いの後なのに三草川の水は澄みわたっていて淀みない。
水面を覗きこめば少し痩せた私の疲れた表情が鮮明に映っている。
──此処なら解放しても大丈夫かもしれない。
白龍の神子は封印の力を持つと言われている。
また同様に黒龍と白龍の調和体である応龍の神子も封印の力を持っている。
ただそれには対価を必要とした。
それは私のうつほの器。
怨霊の嘆きや悲しみ、怨霊を構成するありとあらゆる負の感情を、私の躯に流し込み、浄化する。
ただ怨霊を倒すだけでは行き場を無くした思いは戦場をさまよい、またやがて怨霊となる。
哀しみや嘆きを受け入れることは楽なことではない。
少しでも気を許せば私の意識さえのっとられてしまいそうになる。
だけど。
怨霊はとても哀しい存在で、誰かの救いを必要としているから。
私は応龍の神子だから「声」も聞くことが出来るから。
勿論全ての怨霊が浄化を望んでいる訳ではないけれど望まぬ怨霊は人を傷付ける事を望むから放っておくわけにはいかない。
結局は全ての怨霊を封印しなければならないのだ。
そして私の躯に溜った悪意は私の内で浄化して、世界へ返す。
また新たなものとして世界に降り立つ為に。