あなたは私を知らなくても
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足音を消して。
気配を隠して。
私は一直線に九郎さんの部屋を目指す。
この廊下を通って、九郎さんに会いに行くのもこれが、 最後。
それが私の選択の代償。
夜ももう遅い。
もしも九郎さんがもう眠ってしまっていたなら、その時は潔く諦めよう。
会えないのなら、それが私達の運命だったのだ。
でも、私は全てを終わりにするわけではない。
今の私達の関係に一時の終止符を打つだけだ。
一時、というのは私の願望だ。
九郎さんが望まなければ、今日の別れで全てが終わる。
関係の修復が叶うか否かは九郎さんの選択が全てなのだ。
私はそっと九郎さんの部屋の前に立つ。
いつもこの部屋の前に立つ時には決まって緊張していた。
でも今日は不思議なくらいに心は静まり返っていた。
「夜遅くにごめんなさい。奏多です。九郎さん、まだ起きていますか?」
もしももう既に眠ってしまっているのであれば起こしてしまわないように、私は声のトーンを控え目にして声を掛ける。
部屋の明かりはついていない。
やはりもう眠っているのかも知れない。
少し待ってみて、返事がなければすぐに引き返そう。
そう思っていた矢先に、衣擦れの音と共に、部屋の戸がゆっくりと開いた。