あなたは私を知らなくても
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私の決めたこと
あなたに何の相談もせず
私が一人で決めたこと
明日になれば
私はあなたの敵になる
だから恋人のあなたとは
今日でさよなら、なの──
《それは、けじめだから》
いつから、こんな風に考えるようになったんだろう。
このままじゃいけない。
今のままでは、何も変えられはしない、と。
幾度となく時空を越える内に、否が応でも気付いてしまった。
私が源氏にいても、救えない命がある。
守れないものがある。
誰も犠牲にならずに、なんてそんな綺麗事は今の私には言えない。
そんな風に楽観的に物事を捉えられなくなるようなことを、私はこれまでに何度もしてきた。
人によっては非道だ、と罵るだろうと思われるようなことさえ。
手段なんて選んでいられなかった。
口先だけでは、何も守れやしないと気付いてしまったから。
本当は夜の間に景時さんの屋敷を出るつもりだった。
誰にも告げるつもりはなかった。
そんなことしたら、お互いに辛いような気がしたから。
私も、みんなも。
でも、どうしても伝えたい人が一人だけいた。
恋人の九郎さん。
私のことを誰よりも愛してくれて、何度も私を守ってくれた。
私を守るために、彼は何度命を落としたことだろう。
私は何度彼を見送っただろう。
彼は私を守る必要なんてないのに。
この世界で誰が大切かを考えれば、異邦人の私ではなく、源氏を率いて戦う大将である源九郎義経こそが生き残るべきなのは明白だ。
「九郎さん、起きていますか?」
夜の闇に紛れ、九郎さんの屋敷のある六条堀川へ。
誰にも見つからずに、中に入り込む。
九郎さんには悪いけれど、警備があまりにも緩すぎる。
小娘一人にこうも容易く侵入されてしまうというのはいかがなものか。
今回は私にとっては好都合ではあったけれど。
通い慣れていたはずの九郎さんの部屋までの道のりでさえ、心持ちが違うだけでがらりと雰囲気を変える。
いつもはきらきらと輝いて、あっという間の道だったのに、今はこんなにも不安で、心許なくて、とても長く感じる。