あなたは私を知らなくても
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いつも私は不安になる
あの遠い異世界で
運命に抗い
人道に背くことをしていた
そんなことをした私が
幸せを手にしていいのかと
咎を受ける日が来たのなら
私はそれを甘んじて受け入れよう
だからその日が来るまでは
彼の側にいることを許して──
《二人きりでささやかにお祝いを》
「ただいま」
近くの小学校に剣道を教えに行っている九郎さんが帰宅した。
私はガスを止め、すぐに玄関に彼を迎えに行く。
当たり前の日常。
1年前なら、きっと考えつきもしなかったであろう日常。
1年前だって、私は幸せじゃなかったわけじゃない。
大切な幼馴染みや仲の良い友達がいて、すごく充実してた。
だけど今はそれ以上に幸せなのだ。
幸せすぎて恐くなるくらい。
「おかえりなさい」
「ああ」
「道着、お預かりしますね」
「いつも悪いな」
「いいえ、気にしないでください」
汗で少し湿った剣道着を九郎さんから受け取り、彼の足元にスリッパを並べる。
九郎さんは自然な動きでスリッパに足を通す。
この世界に来たばかりの頃は何ともぎこちない動作であったけれど、九郎さんもいつの間にか慣れたらしい。
そういう些細なところで、少しずつ九郎さんがこの世界に馴染んできたことを実感できるから嬉しい。
「!!今日はカレーか!」
九郎さんはまるで子犬のように鼻をぴくぴくと動かし、今日の夕食を言い当てた。