髪を下ろしたあの人は
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何かあるとすぐに消極的、否定的に物事を考えがちな奏多ちゃんに、オレは思わず笑ってしまった。
オレも割と悲観的に物事を捕えてしまいがちな方だけど、彼女はそれ以上だった。
だからこそ、奏多ちゃんを放っておけなくなるんだ。
例え全てを擲っても彼女の傍に居て、守ってあげたいと。
「神子の力はなくなっても、私、強いですよ」
オレの笑顔に、奏多ちゃんもつられたのかいつも通りの笑みを浮かべる。
京にいた時にも見せてくれていた、自信に満ちた強気な表情。
うん、やっぱり奏多ちゃんはそうでなくちゃ。
オレのために悲しそうな表情をするのは、見ているオレまで辛くなる。
「オレだって負けないよ!」
「…そんなこと言っていいんですか?私の剣術の腕はリズ先生仕込みですよ」
「あ、ははっ…そう言えばそうだったね。でも、大丈夫!ちゃんと奏多ちゃんはオレが守るからね」
「ふふ、じゃあ守り合いっこ、ですね」
お互いを抱き締めたまま、額を寄せ合う。
先程まで煩く感じていたはず雨音はもう気にならない。
オレの目には奏多ちゃんしか映らないし、オレの耳には奏多ちゃんの声しか聞こえないから。
いずれ奏多ちゃんもそんな風になればいい。
そうすれば、雨を畏れる必要はなくなるから。
名前を呼べば
優しく振り返ってくれて
腕を伸ばせば
抱き締めさせてくれる
オレばかりが満たされ続けて
君はオレの傍にいて幸せ?
そんな不安な気持ちも
この曇天さえも
君の笑顔が吹き飛ばしてくれるんだ──
《終》