髪を下ろしたあの人は
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オレなんかのどこがいいんだろう、といつも思う。
一度聞いたことがあったけれど“全部、です”と笑って答えられてしまってからは、同じ質問が出来なくなってしまった。
もしかしたら、あの時そう答えたのは奏多ちゃんの作戦だったんじゃないのかとさえ思う。
「おはよう、奏多ちゃん。オレなら大丈夫、ちゃんと君の傍にいるよ?」
「…はい」
オレの存在に触れて、声を聞いて安心したのか奏多ちゃんは少し落ち着きを取り戻したようだった。
少し浅くなってしまっていた呼吸も、今はもう随分といつも通りになっている。
「やっぱり、まだ不安?」
「…景時さんが、いなくならないっていうのは、少しずつ受け入れられるようになりました。景時さんがちゃんと私に約束してくれたから。どこにも行かないって」
そう、オレは彼女に誓ったのだ。
この世界の龍脈が正しく巡り始め、白龍の力が戻り、元の世界に戻れることになった時に。
元の世界の全てを捨てても、朔を一人にすることになってしまったとしても。
それでも、オレは何よりも奏多ちゃんの傍にいさせて欲しいのだと。
「うん、そうだね」
「だけど、やっぱり雨は嫌い。あの日のことを思い出してしまうから。私にはもう応龍の神子としての力はない…だから、私の知らないところで景時さんが傷付いていたらどうしようって…それがどうしようもなく怖くて…」
そう言いながらオレを見上げた奏多ちゃんの瞳には今にも零れ落ちてしまいそうなほどに涙が込み上げていて。
オレがその涙を掬いとるように彼女の目尻にそっと唇を落とした。
「オレ、奏多ちゃんが思ってるほど、弱い男じゃないから、奏多ちゃんに守ってもらわなくても大丈夫だよ」
「…それじゃあ、私はもう要らないですか?」
「そういう意味じゃなくて…これからはオレがずっと奏多ちゃんを守っていくからってことだよ~」