幾千の繋がらぬ運命を越えて
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伝えてもいいんだろうか。
許されるだろうか。
ずっと口に出せずにいた願い。
胸の中に、ずっとずっと秘めてきたんだ。
大切に大切に隠してきたんだ。
ねぇ、もう許されてもいいんだよね?
「あなたと一緒にいたい。ずっと側にいて、もう二度と離れたくない……」
喉から絞り出した声。
震えていたけれど、全部ちゃんと伝わったよね。
あなたの答えは分からない。
だけど私の気持ちを全部伝えたかったんだ。
伝えなかったことを後悔することだけは絶対にしたくなかったから。
悲しい思いをするのはもう十分だから。
拒絶されたって構わなかった。
だって私にあなたを縛り付ける権利などないのだから。
人は誰も自らの心のままに生きていくものだと思うから。
「クッ……綺麗な言葉を選んだものだな。お前の願いは、思いは、そんなに柔らかい言葉で括れるものではないだろうに」
知盛は小さく笑ってから私の身体をぐいっと抱き寄せた。
唐突な知盛の行動に私は瞬きをすることすら忘れてしまった。
「ずっと、お前だけを探していたんだ。──俺のものになれ、奏多」
お腹に響く低い声でささやかれて、私は小さく頷いた。
求められることの喜びを感じながら、ゆったりと瞳を閉じる。
そっと手を伸ばしてあなたのぬくもりを抱き締める。
あなたの手を掴めなかったのは、この時空のそう遠い日のことではない。
でも今あなたは確かにここにいて、私を抱き締めてくれている。
それだけは偽りのない真実。
多くの運命の中で幾千万の“私”は未だ傷つき、悩み、立ち止まっているんだろう。
でも、“私”ならきっと乗り越えられるはず。
幾千万の“あなた”を求めて──
大切なものを手にした私達はこの運命の環から立ち去ろう──
《終》