あなたは私を知らなくても
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今この瞬間にも、私は九郎さんの命を絶つことが出来る。
私に心を許し、完全に油断している彼を手に掛けることは、赤子の手をひねるよりもずっと容易い。
でも、そんなことをしたりはしない。
九郎さんを殺しても、私には何のメリットもない。
ただ悪戯に無駄な悲しみを生み出すだけだ。
悲しみは憎しみを呼ぶ。
憎しみは怒りを呼んで。
そして負の連鎖が続いていく。
私は誰よりもそれを一番分かっているつもりだから。
決して思い上がりなんかじゃなく。
「昔ほど、痛みを感じることがなくなりましたから」
「奏多、それは……」
平気とは、言わない。
九郎さんはきっとそう言いたいんだろう。
九郎さんの何とも言えないような複雑な表情を見れば、それくらいのことは分かる。
だから私は笑ってみせる。
大丈夫なんだと、九郎さんに証明するために。